「ミックスは何から始めればいい?」 「ミキシングの順番は?」 「ミキシングの目的は?」 という方のために、ミキシングの目的、手順について解説します。
ミキシングとは
ミキシングとは、ボーカルやギター、ベース、ドラムなどの複数のトラックをまとめて2チャンネルのステレオ・ミックスにすることです。
ミキシングの目的
ミキシングの目的は、各パートをバランスよく2チャンネルのステレオ・ミックスにまとめることです。
よいミックスというのは主観的なもので、絶対的な正解があるわけではありません。
曲のタイプやミックスする人の好みにより、どのようなミックスになるかは異なります。
一般的には、下記の3つのポイントに注意してミックスすればよいでしょう。
クリアさ
ミックスは、各パートの音がはっきりと聴こえるように、クリアで分離よくすべきです。
各パートの位置や音色を調整することで、クリアなミックスが可能になります。
適切な配置
各パートそれぞれを、その曲にふさわしい位置に置く必要があります。
ポップスなら、ボーカルは一番前でなっている必要がありすし、ダンス・ミュージックならキックを一番前に出すでしょう。
それほど重要ではないパートは、左右に振ったり、後ろへ下げたりします。
適切なバランス
よいミックスにするには、さまざまな意味でバランスのとれたミックスにする必要があります。
周波数特性は、どの帯域も同じ音量で出ているように感じられるべきです。
また、左右のチャンネルにおいては、左は高域が多く、右に中域が多いというようなバランスのくずれたミックスはよくありません。
低域は、真ん中において、中域と高域は左右からバランスよく出ているべきです。
また、パートの振り分けにおいて、左はパーカッシブな音ばかり、右はゆっくりなパッド系ばかりというようなミックスはよくありません。
左右にバランスよく配置すべきです。
ミキシングの基本的な手順
準備を整える
ミキシングを始める前に、準備を整えておくことが大切です。
準備をきちんとしておくことで、後の工程を効率よく進められます。
トラック名をつける
ミックス時に分かりやすいように、トラック名をつけます。
トラックに色をつける
どのパートがどこにあるかわかりやすいように、トラックに色をつけます。
トラックを並べ替える
ミックスの作業がしやすいように、トラックの順番を変更します。
トラックをグループ化する
ドラムやボーカルなど、グループ化しておいたほうがよいトラックは、グループ化します。
バス・トラックをつくる
リバーブやディレイ用など、バス・トラックが必要であれば、作成してルーティングを行います。
音量のバランスを調整する
ボリューム・フェーダーで各トラックの音量を調整します。
ミキシングの中で、もっとも重要な工程です。
ここがうまくいっていないと後の作業に問題が出てきます。
この時点で、完全に決めてしまえるわけではありませんが、しっかりとやっておくことが重要です。
重要なシーンから順番に
曲の一番の盛り上がりのシーンから順番に始めます。
もっとも多くのパートが鳴っているシーンです。
1番重要なシーンの音量調整が終わったら、このシーンにつながるシーンの調整をしていきます。
これを順番に繰り返して曲全体の調整をします。
イントロは最後に調整することになる場合が多いです。
重要なパートから順番に
曲の中でもっとも重要なパート以外のフェーダーを全部下げてミュートします。
2番目に重要なパートのフェーダーを操作して、もっとも重要なパートに対して音量のバランスをとります。
続いて、3番目のパート、4番目のパートという順番で音量を調整していきます。
パンで左右の定位を調整する
パンで各パートの水平方向の位置を調整します。
各パートに適切なスペースを与えて、クリアで分離のよいミックスにします。
最重要なパートと低域は、真ん中に置きます。
ボーカルとキック、ベースは真ん中です。
それ以外のパートを左右にふって、左右のバランスのとれた拡がりのあるミックスをつくります。
EQで不要な帯域をカットする
イコライザーで不要な帯域をカットします。
キックとベースの超低域、30Hz以下を48dB/Octなどの急峻なハイパス・フィルターでカットします。
30Hz以下はほぼ再生不可能な帯域なので必要ありません。
キックとベース以外のパートを100Hz以下をハイパスフィルターでカットします。
これにより、キックとベースのためのスペースをあけ、クリアな低域をつくることができます。
低域を少し残しておきたいパートがあれば、ハイパスフィルターとローシェルフフィルターを組み合わせて調整します。
その他に、問題のある帯域があればカットします。
コンプでダイナミクスを調整する
コンプレッサーでダイナミクスを調整します。
ボーカルの音量に一貫性を持たせたり、ドラムのパンチ感を出したりします。
EQで音色を調整する
イコライザーで音色を調整します。
各パートの好ましい帯域をブーストします。
例えば、ボーカルの高域をブーストして抜けをよくするなどです。
リバーブ/ディレイで奥行きを調整する
リバーブとディレイで奥行きを調整します。
リバーブ用のトラックをつくって、各パートからそこにセンドで送ります。
リバーブを深くかけるほど、音は後ろへ下がります。
音を後ろへ下げずに、奥行き感を出したい場合はディレイを使用します。
例えば、ボーカルにはディレイが適しています。
出来上がりを確認する
リファレンス曲と比べる
リファレンス曲と比べてみて、出すぎている帯域がないか、音圧感は十分か、左右の拡がりや奥行き感は適切か、などを確認します。
モノ再生して問題がないか確認する
モノラルで再生したときに、位相のキャンセルなどによる問題が起きていないか確認します。
クラブなどでは、モノラルで再生されるので、モノ互換性のあるミックスにしておく必要があります。
さまざまな再生環境で確認する
モニター用のスピーカーだけでなく、ヘッドホンやパソコンのスピーカーなどでもミックスを聴いてみて問題がないか確認します。
時間をおいてから確認する
長時間ミキシングをしていると、耳が疲れて適切な判断ができない場合があります。
休憩してリフレッシュした耳で再度ミックスを確認してみます。
まとめ
ミキシングのプロセスは一方向に進むものではありません。
途中で問題があれば、前の手順に戻って修正しましょう。
ミキシングの良し悪しは、あなたの音楽の出来栄えに大きな影響を与えます。
基本を理解して、ミックスの練習を繰り返しましょう。