ミキシングでのEQ・イコライザーの使い方

ミキシング

イコライジングはミキシングにおいて、音の分離やクリアさを決定する重要な工程です。

この記事では 、イコライザーの仕組み、種類、ミキシング時の使い方について解説します。

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イコライザーとは

イコライザー (Equalizer) とは、オーディオ信号の特定の周波数帯域増幅(ブースト)させたり、減衰(カット)させたりするエフェクターです。略してEQ(イーキュー)とも呼ばれます。

オーディオ信号の不要な帯域を減衰させたり、よい帯域を増幅して強調したりします。個々のパートの音作りや、ミキシングにおいて分離のよいクリアなミックスをつくるために使われます。

イコライザーの仕組み

イコライザーは複数のフィルターを組み合わせて構成されています。

例えば、3バンドのイコライザーであれば、3つのフィルターを組み合わせています。フィルターの種類には、ロー・シェルフ、ハイ・シェルフ、ロー・パス、ハイ・パス、ピーク、ノッチがあります。

イコライザーの種類

グラフィック・イコライザー

グラフィック・イコライザー (Graphic Equalizer) とは、中心周波数が固定された多数のピーク/ノッチ・フィルターを組み合わせているイコライザーのことです。

多数の縦フェーダーで各帯域のゲインを調節します。フィルターの中心周波数やバンド幅を変更することはできません。

DAWでは、ほとんど使われません。

パラメトリック・イコライザー

パラメトリック・イコライザー (Parametric Equalizer) とは、フィルター・タイプや中心周波数、バンド幅、ゲインを変更できるフィルターを組み合わせているイコライザーのことです。

パラメトリックとは、パラメーターが可変という意味です。フレキシブルで使いやすいです。フィルター・タイプには、ロー/ハイ・シェルフ、ロー・パス/ハイパス、ピーク、ノッチがあります。

DAWで、よく使われるイコライザーです。

パラグラフィック・イコライザー

パラグラフィック・イコライザー (Paragraphic Equalizer) は、パラメトリック・イコライザーに、グラフィカルなスコープがついているものです。

スコープには、オーディオ信号のスペクトルとEQの周波数レスポンスが表示されます。EQの効果が視覚的に分かるので、使いやすいです。

DAWで、もっとも一般的に使われるイコライザーです。

デジタルEQとアナログ・モデリングEQの特徴、使い分け方

イコライザーには、最初からデジタルのソフトウェアとして設計されているデジタル・イコライザーと、アナログ電子回路を用いたハードウェアのアナログ・イコライザーをモデリングしたアナログ・モデリング・イコライザーとがあります。これらはどう違い、どのように使い分ければよいのでしょうか。

デジタル・イコライザーの特徴

デジタル・イコライザーの特徴は、様々な設定が可能でフレキシブルであることと、音に色付けがなくクリーンであることです。オーディオ信号の問題となっている帯域をカットする修正作業に適しています。

アナログ・モデリング・イコライザーの特徴

アナログ・モデリング・イコライザーの特徴は、音質にハードウェアのイコライザーがもつ温かみ、心地よい歪みがあることです。好ましい帯域をブーストしサウンドに色付けをする作業に適しています。

デジタルEQとアナログ・モデリングEQの使い分け

デジタルEQは、エフェクト・チェーンの最初につないで、問題ある帯域をカットするのに使います。

アナログ・モデリングEQは、エフェクト・チェーンの後段につないで、最終的な色付けに用います。

色付けの必要がなければ、ブーストにデジタルEQを用いてもかまいません。

イコライザーの使い方

イコライザーの用途は主に2つあります。

各パートの音質を調整する

イコライザーの用途のひとつは各パートの音質を調整することです。

不要な帯域をカットし、強調したい帯域をブーストします。

不要な帯域をカットする

各パートのオーディオ信号の不要な帯域をノッチ・フィルターでカットします。

例えば、ボーカルの破裂音がある高域をカットしたり、レコーディング・ルームの共鳴がある周波数をカットしたりします。

不要な帯域をカットする場合は、一般的にフィルターのバンド幅を狭くします。

好ましい帯域をブーストする

各パートのオーディオ信号の強調したい帯域をピーク・フィルターやシェルフ・フィルターでブーストします。

例えば、ボーカルの抜けをよくしたい場合にハイ・シェルフで高域をブーストしたりします。

好ましい帯域をブーストする場合は、一般的にフィルターのバンド幅を広くします。

ミキシング時に各パートに帯域を割り振る

イコライザーの用途のもうひとつは、ミキシング時に各パートの周波数特性を調整して、それぞれのパートに適切なスペースをつくることです。

これにより、各パートの分離がよいクリーンなミックスが可能になります。

やり方としては、あるパートにある帯域を前に出したい場合には、その帯域をブーストした上で、その他のパートでその帯域をノッチ・フィルターでカットします。

例えば、キックの60Hz帯を出したい場合、キックの60Hz帯をブーストし、同じく60Hz帯を使用しているベースの60Hz帯をカットします。これにより、60Hz帯ではキック前に出てきてベースは後ろへ引っ込み、分離のよいサウンドになります。

このようにして、全パートに適切な帯域を割り振ることで分離のよいクリーンなミックスが可能になります。

イコライザー後の作業

ボリュームを再調整する

イコライザーをかけると音量が変化するので、各パートの音量の再調整が必要です。

いろいろな再生環境でチェックする

いろいろなスピーカーやヘッドホンなどでモニタリングしてみて、バランスのよいイコライジングが行えているか確認しましょう。

音の周波数帯域ごとの役割

オーディオ信号は帯域ごとにその役割があります。

この帯域ごとの役割を覚えておくと、問題がある場合にどの帯域をいじればよいかが分かります。それにより、ミキシングを効率よく行えるようになります。

オーディオ信号を6つの帯域に分け、その役割を解説します。

サブベース 20 ~ 60 Hz

サブ・ベースの帯域は、人間が聴くことができる周波数帯域の中で、最も低い部分の帯域です。20Hz以下の振動は、人間には聴こえません。

体にブーンとくる低音がこの帯域です。

この帯域では、音程はほとんど判別できません。

サブベースを再生するには、サブウーファーなどの適切なモニター環境が必要です。イヤホンやラップトップのスピーカーでは聞こえません。

この帯域がしっかり出ていないと、細く迫力のないミックスになってしまいます。

この帯域を鳴らす必要があるのは、基本的にはキックとベースのみです。キックとベース以外のパートでは、この帯域は不要なのでハイパス・フィルターをかけてカットしておきましょう。

30Hz以下の帯域を再生できるサウンド・システムはほとんどないので、30Hzでカーブの急峻なハイパス・フィルターをかけて30Hz以下をカットしましょう。これにより他の帯域を大きく鳴らすためのスペースを確保できます。

ベース 60 ~ 200 Hz

ベースの帯域は、ミックスのファットさに影響を与えます。この帯域がしっかりでていないと細いミックスになってしまいます。逆に、過剰に出すとブーミーになりすぎてしまうので注意が必要です。

サブベースと違い音程をはっきりと判別できます。

この帯域は、主にキックとベースが使用します。キックとベースを、この帯域でしっかり出してけば、イヤホンやラップトップなどの貧弱な再生環境でも、キックやベースの音をしっかりと鳴らすことができます。この帯域でキックとベースを適切に住み分けさせることが、パンチのあるローエンドをつくる上で重要になります。

ロウミッド 200 ~ 600 Hz

ロウ・ミッドの帯域は、キックやベースからギター、シンセ、ボーカルなど多くのパートが使用します。その結果、この帯域で多くのパートが重なり、音が不明瞭でこもったミックスの原因となる帯域です。

ミキシングにおいて一番注意が必要な帯域です。

ミッド 600 ~ 3k Hz

ミッドの帯域は、音楽の中心となる帯域です。

人間はこの帯域に焦点を当てて音楽を聞いています。

ボーカルは主にこの帯域を使用します。

ほとんどの楽器がこの帯域を使用します。

しっかりと住み分けさせることが重要です。

ハイミッド 3k ~ 8k Hz

ハイ・ミッドの帯域は、明るさやクリアさ、アタック感、シャープさなどに影響を与えます。

ボーカルの存在感を高めるには、この帯域を軽くブーストするとよいです。

ハイ 8k ~ 20k Hz

ハイの帯域は、ミックスの輝きや空気感に影響を与えます。

広いQのベル・カーブのフィルターか、ハイ・シェルフ・フィルターで軽くブーストすると輝きのあるミックスにできます。

この帯域が出すぎていると、キンキンして耳が疲れるサウンドになってしまいます。

パートごとのEQの設定例

ドラム

ドラムは、基本的にアタック時の高域と、アタック後からリリースにかけての低域を強調し、その間の不要な帯域をカットします。これによりスッキリとして締りのあるサウンドになり、他のパートのためのスペースをつくることもできます。

キック(バスドラム)

キックのアタック部分の「バシッ」と鳴る部分は、1k~6kHzあたりにあります。このあたりの適切な箇所をブーストします。これより上の帯域はキックには必要ないので、ゆるめのカーブのローパスフィルターでカットします。

キックの低域の「ドン」と鳴るボディの部分は、40~100Hzあたりにあります。このあたりの適切な箇所をブーストします。これより下の帯域は不要なので、急なカーブのハイパスフィルターでカットします。

ブーストしたハイとローの中間の部分、200~400Hzあたりの不要な部分をカットします。

ブースト、カットする周波数やQ、ゲインは個々のケースにより異なるので、好みの音になるように調整してください。

スネア

スネアのアタックのスナッピーの部分は2k~10kあたりにあります。このあたりの適切な箇所をブーストします。

スネアのボディの部分は、100~200Hzあたりにあります。このあたりの適切な箇所をブーストします。これより下の帯域は不要なのでカットします。

ブーストしたハイとローの中間の不要な帯域をカットします。

ハイハット

ハイハットのアタックの部分は、5k~12kHzあたりにあります。このあたりの適切な箇所をブーストします。

ハイハットのボディの部分は、1k~5kHzあたりにあります。このあたりの適切な箇所をブーストします。これより下の帯域は不要なのでカットします。

ブーストしたハイとローの中間の不要な帯域をカットします。

ベース

ベースは、キックと同じ帯域を使用するため、キックとの関係を考慮してEQを設定する必要があります。
キックを強調したい帯域ではベースをカットし、ベースを強調したい帯域ではキックをカットすることで、それぞれに適切なスペースを確保できます。

ベースの存在感を増したい場合には、ローエンドの基音をブーストするのではなく、その上の倍音の部分をブーストしたほうが効果があります。倍音がそもそもない場合は、サチュレーターやエンハンサーで倍音を付加します。

キックとベースの分離をよくするためには、サイドチェーンコンプを使って、キックが鳴っているときには、ベースを圧縮するのも有効です。

まとめ

イコライジングはミキシングにおいて、音の分離やクリアさを決定する重要な工程です。適切なイコライジングを習得することで、あなたのミックスは飛躍的に改善するでしょう。