コンプレッサーの機能と使い方

DTM

コンプレッサー (compressor) は、音量が一定値を超えた部分の音量を下げて音を圧縮するエフェクターです。略してコンプとも呼ばれます。

この記事では、コンプレッサーの目的や使い方などについて解説します。

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コンプレッサーとは

コンプレッサーは、音を圧縮するエフェクターです。ここでいう圧縮とは、音量が大きい部分を小さくするということです。

コンプレッサーは、音作りやミキシングで非常に重要なエフェクターです。しかし、音量を変えるだけで音色は変わらないので、特にDTM初心者には、その効果が分かりにくく、使い方が難しいです。

コンプレッサーの仕組み

コンプレッサーの仕組みは、簡単にいうと自動のボリューム・コントローラーです。

コンプレッサーに入力される音の音量が、しきい値を超えたらボリュームを下げ、しきい値より下がればボリュームを元に戻します。

コンプレッサーの構造

上図は、コンプレッサーの基本的な構造を示しています。

入力されたオーディオ信号の音量を計測し、音量がしきい値を超えたらアンプの音量を下げ、音量がしきい値より下がればアンプの音量を元に戻します。これが、コンプレッサーの基本的な仕組みです。

コンプレッサーの手順

上図は、コンプレッサーの動作の手順を示しています。

①は、コンプをかける前の音を示しています。

①の音にコンプレッサーをかけて圧縮すると、②のようになります。音量がスレショルドを超えている部分だけが、圧縮されて小さくなっています。

③は、②を増幅したものです。①の元の音と比べて、音量のばらつきが少なく、全体的に音量が大きくなっています。

コンプレッサーのパラメーターと使い方

コンプレッサーのパラメーターとその使い方について解説します。

スレショルド

スレショルド(Threshold)は、圧縮を始める音量のしきい値のことです。音量がスレショルドを超えた部分のみが圧縮されます。

例えば、スレショルドが-5dBであれば、音量が-5dBを超えた部分が圧縮され、-5dB以下の部分は圧縮されません。

上図は、スレショルドを変えたときのコンプのかかり方の違いを示しています。

①は、コンプをかける前の音を示しています。

②は、高めのスレショルドです。音が大きな部分のみでコンプがかかっています。

③は、スレショルドを②より下げています。小さな音の部分でもコンプがかかるようになっています。また②と比べて、圧縮量が大きくなっています。

レシオ

レシオ(Ratio)は、音量の圧縮率です。音量がスレショルドを超えている部分を、レシオの比率で圧縮します。

上図は、レシオを変えたときのコンプのかかり方の違いを示しています。

Ratio 1:1のコンプがかかっていない状態では、音量のピーク値とスレショルドの差が30dBです。Ratio 2:1では、このピークとスレショルドの差が30/2=15dBになります。Ratio 6:1では、このピークとスレショルドの差が30/6=5dBになります。

アタック・タイム/リリース・タイム

アタック・タイム(Attack Time)は、音量がスレショルドを超えてから、レシオの圧縮率になるまでの時間です。

リリース・タイム(Release Time)は、音量がスレショルドより下がってから、圧縮をやめるまでの時間です。

上図では、音量のピークの部分が0dB、スレショルドが-20dB、レシオが2:1でコンプをかけたときのアタック時、リリース時の圧縮量の変化を示しています。

音量がスレショルドを超えて0dBになるとすぐに圧縮が始まり、アタックタイム経過時にレシオで指定した圧縮量になります。この図の場合では、スレショルドを20dB超えているので、20dBをレシオの2で割って20/2=10dB圧縮されます。

音量が-30dBへ下がって、スレショルドを下回ると、10dBの圧縮が開放され始めます。リリースタイムが経過すると圧縮が完全に開放され、圧縮がかからない状態になります。

ソフト・ニー / ハード・ニー

ソフト・ニー / ハード・ニー (Soft Knee / Hard Knee) は、圧縮と非圧縮の境目のなめらかさです。

ソフトニーは、圧縮と非圧縮の境目をスムーズにします。圧縮はスレショルドを下回る音量からゆるやかに始まり、スレショルドをいくらか超えてからレシオで指定した圧縮率に到達します。

例えばハードニーでは、圧縮率が1:1から4:1などへ突然切り替わりますが。ソフトニーの場合は、1:1から4:1へと徐々に変化します。

ソフトニーはハードニーよりも自然で透明な圧縮が行えます。ボーカルなどに軽めにコンプをかける際に適しています。コンプをエフェクトととして音作りに使うような場合は、ハードニーが適しています。

コンプレッサーの種類によっては、ソフトニーのニーの幅を変更できるものがあります。ニーの幅を広げればより自然な圧縮感になります。

ソフトニーの場合は、ハードニーの場合よりもアタックとリリースを短くしても、自然なコンプ感が得られます。

ゲイン・リダクション

ゲイン・リダクション・メーターは、どれぐらい音を圧縮したかを示すメーターです。

ゲイン・リダクション・メーターを見れば、いつ、どれぐらい圧縮が行われたかを見ることができます。

Peak / RMS

Peak と RMS は、コンプレッサーの音量検知のアルゴリズムです。ここで計測した値がスレショルドを超えるとコンプレッサーが動作を開始します。

Peak とは

Peak は、波形の絶対値 (オーディオ信号のマイナス側をプラス側に折り返したもの) を計測します。つまり、1サンプルでもオーディオ信号の絶対値がスレショルド値を超えた場合、コンプレッサーが作動します。

RMS とは

RMS (Root Mean Square) は、波形の絶対値の一定時間の平均値を計測します。

RMSは、一定時間の平均値であるため、オーディオ信号の絶対値が一瞬だけスレショルド値を超えただけでは、コンプレッサーは動作しません。一定時間スレショルドを超えると、コンプレッサーが動作を開始します。

RMSにおける平均値とは、二乗平均平方根 (Root Mean Square) のことで、一定時間の各サンプル値の二乗の平均の平方根のことです。

RMSを計測する時間は、一般的に300msです。コンプレッサーの機種によってはこの時間を変更できます。時間を短くすれば、コンプレッサーの反応が早くなり、長くすれば反応が遅くなります。

RMSは、人間が聴いた時の音量感に近い値を示します。

Peak / RMS の選び方

Peakは、反応が早くトランジェントの取りこぼしがありません。そのため、パーカッシブな音のトランジェントを逃さず圧縮したいときに Peak を選択します。

RMSは、反応が遅いのでトランジェントを通過させる場合はRMSを選択します。ボーカルなどに自然な圧縮感がほしい場合に向いています。

コンプレッサーの目的

コンプレッサーで出来ることは、主に6つあります。

音量をそろえる

コンプレッサーは、音の大きさをそろえることができます。

ボーカルや生演奏のベース、ドラムなどでは一定の音量で歌ったり演奏したりすることは難しいので、音量が大きすぎたり小さすぎたりする部分があります。それらの音量の大きすぎるところを下げ、または、小さすぎるところを持ち上げて音量をそろえます。

ゆるめのレイト 1 : 2 や 1 : 4 で、アタック、リリースは長めに設定します。この用途の場合は、個別のトラックにコンプをかけます。

DAWでシンセなどを打ち込んだ場合は、音量がそろっているので、この用途でコンプレッサーを使うことは基本的にありません。

アタック・リリースの質感を変える

コンプレッサーは、アタックやリリースの質感を変えることができます。ドラムやベースなどのパーカッシブな音源のアタックをパンチ感のあるものにしたりソフトにしたり、また、リリースをファットにしたりタイトにしたりできます。

アタックのパンチ感を出したい場合は、アタックを圧縮せずに通り抜けさせるために長めのアタック・タイムを設定します。アタックをソフトにするには、短いアタック・タイムを設定して、アタック部分を圧縮します。

リリース部分をファットにしたい場合は、リリース・タイムを短くして、アタック部分が終わるとすぐに圧縮をやめるようにします。リリース部分を圧縮してタイトにしたい場合には、リリース・タイムを長めにします。

この用途の場合は、個別のトラックにコンプをかけます。

複数のパートの音をまとめる

コンプレッサーをかけることで、複数のパートをギュッーとまとめて締まりのある音にすることができます。

この用途に特化しているコンプレッサーはグリュー・コンプレッサー(Glue Compressor)や、バス・コンプレッサーと呼ばれます。

アタックを通り抜けさせられる程度のアタック・タイムを設定します。リリース・タイムは曲のテンポが速ければ短め、遅ければ長めにします。

この用途の場合は、複数のトラックをまとめたミックス・バスや、マスター・バスなどにコンプをかけます。

音圧を上げる

コンプレッサーをかけることで、音圧を上げることができます。音量の大きい部分の音量を圧縮してから、圧縮した分、全体の音量を上げることで、音圧を上げることができます。

この用途の場合は、ミックス・バスやマスター・バスにコンプをかけます。

スペースをつくる・ポンピングさせる

サイドチェーンを使ってコンプレッサーをかけることで、他のパートのためのスペースをつくることができます。

例えば、ベースにかけているコンプレサーを、キックの音量でサイドチェーンからトリガーすることで、キックが鳴っている時だけベースが圧縮されるということができます。これにより、キックとベースが重なるのを防ぐことができ、キックがはっきりと聴こえ、音のこもりなくすことができます。

同じやり方で、コンプレッサーをきつく極端にかけることで、『ンワンワ』という感じのポンピング・サウンドをつくることができます。

この手法は、エレクトロニック・ダンスミュージックで多用されています。ベースやパッドなどにかけたコンプレッサーを、4つ打ちなどのキックでトリガーすることで、キックが鳴っている時は、ベースやパッドの音がほとんど聴こえなくなり、『ンワンワ』というサウンドになります。

まとめ

コンプレッサーはいろいろな用途で使われ、また、多くの場合で効果があまりはっきりとは分からないので初心者には難しいです。パラメーターを動かしながら音の変化を聴いて、コンプレッサーがかかっている音の特徴をつかむようにしていくとよいでしょう。