コンプレッサーは、DTMやミキシングにおいて必須のエフェクトです。
しかし、コンプレッサーは操作方法が複雑であり、また、音の変化も少ないので初心者の方にとって、使い方を習得するのが最もむずかしいエフェクトのひとつです。くわえて、コンプレッサーにはたくさんの種類があり、どれを選べばいいのか分かりにくです。
そこで、この記事では、初心者の方におすすめのコンプレッサーVSTプラグインソフトを紹介します。
- コンプレッサープラグインの選び方
- おすすめコンプレッサーVSTプラグインソフト
- Pro C2 / FabFilter
- SSL G-Master Buss Compressor / Waves
- dbx 160 Compressor Limiter / Waves
- VC 160 / Native Instruments
- CLA-2A Compressor Limiter / Waves
- VC 2A / Native Instruments
- CLA-76 Compressor Limiter / Waves
- VC 76 / Native Instruments
- API 2500 / Waves
- V-Comp / Waves
- PuigChild 660, 670 / Waves
- Vari Comp / Native Instruments
- Pro-MB / FabFilter
- C6 Multiband Compressor / Waves
- C4 Multiband Compressor / Waves
- Rough Rider 3 / Audio Damage(フリー)
- OTT / Xfer Records(フリー)
- MCompressor / MeldaProduction(フリー)
- Kotelnikov / Tokyo Dawn Records(フリー)
- Feedback Compressor II / Tokyo Dawn Records(フリー)
- まとめ
コンプレッサープラグインの選び方
アナログ / デジタル
コンプレッサープラグインには、アナログ系のものとデジタル系のものとがあります。
アナログ系とは、アナログの電子回路を用いたハードウェアのコンプレッサーを、ソフトウェアとしてモデリングし再現したものです。
それに対して、デジタル系は、特定のハードウェアを模倣したものでなく、初めから独自のソフトウェアとして設計されているものです。
アナログ系は、アナログ回路ならではの音色の変化などが再現されていて、その独特の音色を得ることが、アナログ系コンプを使う目的のひとつです。
一方、デジタル系は、一般的に音色の変化やクセが少なく透明な音質です。
アナログ系は、元となる機種によってパラメーターなどが異なり、最初は使い方が分かりにくいです。
デジタル系は、一般的にどれも似たようなオーソドックスな設計になっています。また、グラフィカルなインターフェイスのものが多く、音がどのように変わっているか視覚的にわかるので、初心者の方でも使いやすいです。
アナログ系 | デジタル系 | |
---|---|---|
設計 | ハードウェアを模倣 | オリジナル |
音色 | 色がある | 透明 |
使いやすさ | 使いにくい | 使いやすい |
初心者の方は、使いやすいデジタル系でコンプレッサーに慣れてから、必要があればアナログ系を導入してみるとよいでしょう。
VCA / FET / オプト / 真空管
ハードウェアのアナログ・コンプレッサーは、圧縮をする部分の回路や部品によりいくつかの種類に分けられます。主なものはVCA、FET、オプト、真空管の4つです。
- VCA式
- FET式
- オプト式
- 真空管式
これらの4つのタイプは、それぞれ音の特徴や適した用途が異なるため、アナログ系コンプを選ぶ際には、それぞれのタイプの特徴を理解しておく必要があります。
VCA(Voltage Controlled Amplitude)
VCA式コンプレッサーは、回路の圧縮部分にVCA(電圧制御アンプ)を用いるタイプです。
アナログコンプレッサーの中では、もっとも一般的なタイプです。
スレショルド、レシオ、アタックタイム、リリースタイム、ソフトニー、メイクアップゲインが設定できフレキシブルに使えます。
FET式ほどではありませんが、反応速度(アタックタイム、リリースタイム)が速く、トランジェントや速いダイナミクスの変化をとらえて圧縮できます。
アナログコンプの中では、色付けが少なく透明な音質で圧縮できます。
他の方式と比べて大きなゲインリダクションが可能で、大きなピークの圧縮が可能です。
VCA式コンプの特徴
- 速めのアタック、リリースタイム(FETより遅い)
- 透明な音質
- パンチ感ある圧縮
- 大きなゲインリダクションが可能
- 基本的にハードニー(機種によってはソフトニーに対応)
- パラメーターが多くフレキシブルで広い用途に使える
VCA式コンプの向いている用途
- 速いアッタクでトランジェント、ピークのある音、パーカッシブな音源の圧縮
- 速いアタックでドラムなどにパンチ感を加える。強く圧縮して、パラレルコンプにするのもよい
- 大きなゲインリダクションを利用して、音量の大きなピークやトランジェントの圧縮
- 透明な音質でのピークの圧縮(色付けする場合は、FETのほうがよい)
- ドラムバス、マスターバスなどにかけるバスコンプ
- ミックスをまとめてグリュー感のある締まったサウンドにする
VCA式コンプの向いていない用途
- アナログ的な温かみや太さを加える
VCA式コンプの代表的な機種とモデリングプラグイン
- SSL / 4000G Master Buss Compressor
- Waves / SSL G-Master Buss Compressor
- SSL / 4000G Channel Strip
- Waves / SSL G-Channel
- dbx / 160
- Waves / dbx 160 Compressor Limiter
- Native Instruments / VC 160
- API / 2500
- Waves / API 2500
FET(Field-Effect Transistor: 電界効果トランジスタ)
FET式コンプは、回路の圧縮部分にFETを用いているタイプです。
反応がものすごく速く、色付けが強いのが特徴でパンチのある音をつくるのに適しています。
音量調整には向いておらず、積極的な音作りのためのエフェクトとしての使用に向いています。
圧縮をかけないでもコンプに通すだけで、豊かな倍音が生まれます。
高速で透明な圧縮をしたい場合は、FET式でなく、VCA式が適しています。
FET式コンプの特徴
- 反応がすごく速い
- 色付けが強い
- スレショルドがなくインプットゲインにより圧縮量が決まる
FET式コンプの向いている用途
- ロック系のサウンド アグレッシブなボーカルやギター、ベース、ドラムなど
- 強めにつぶしてパラレルコンプに適す
- アナログ的色付け 通すだけで色がつく
FET式コンプの向いていない用途
- スムーズで透明な圧縮
- 曲全体にわたる音量調整
- バスコンプでは音が濁る
- ストリングスなどのソフトな音源の圧縮
FET式コンプの代表的な機種とモデリングプラグイン
- Urei / 1176
- Waves / CLA-76
- Native Instruments / VC 76
オプト(Optical: 光学式)
オプト式コンプは、回路の圧縮部分にLEDなどの光学素子を用いるタイプです。
反応が遅いのが特徴で、ソフトで自然な圧縮に適しています。
ボーカルやアコギ、ベースなどの音量のムラを圧縮して存在感を高めることができます。
暖かくなめらかな色付けです。
オプト式コンプの特徴
- 反応が遅い
- ソフトで自然な圧縮に適す
- アナログ的な色付け
- レシオが固定されている(通常3:1)
オプト式コンプの向いている用途
- ボーカル、ベースなどの音量の均一化や引き締め
- 曲全体にわたる音量の均一化
- トランジェントを失わずにミックスを引き締めるバスコンプ
- アナログ的なあたたかみを加える
オプト式コンプの向いていない用途
- トランジェントや急激なピークの圧縮
- パンチ感ある圧縮
オプト式コンプの代表的な機種とモデリングプラグイン
- Teletronix / LA-2A
- Waves / CLA-2A
- Native Instruments / VC 2A
- Teletronix / LA-3A
- Waves / CLA-3A
- Tubetech / CL1B
- Softube / Tube-Tech CL 1B
真空管 (Variable-MU: チューブ)
真空管式コンプは、回路の圧縮部分に真空管を用いるタイプです。
反応は、FET、VCAよりは遅く、オプトよりは速いです。
真空管ならではのあたたかなサウンドです。通すだけでも色がつきます。
複数のパートをまとめるバスコンプに適しています。
真空管式コンプの特徴
- 真空管ならではのあたたかみあるサウンド
- 反応速度は中程度
- 音を密着させるバスコンプに適す
真空管式コンプの向いている用途
- バスコンプで音を密着させる
- マスタリング時のコンプ
- 真空管のあたたかみや太さを加える
真空管式コンプの向いていない用途
- 速いダイナミクスやトランジェントの圧縮
- パンチ感ある圧縮
真空管式コンプの代表的な機種とモデリングプラグイン
- Fairchild / 660, 670 Tube Limiter
- Waves / PuigChild 660, 670
- Manley / Vari-Mu Compressor
- Native Instruments / Vari Comp
シングルバンド / マルチバンド
コンプレッサーには、シングルバンドのものとマルチバンドのものとがあります。
シングルバンドコンプとは、低域から高域までの全帯域を均一にコンプをかけるものです。通常のコンプレッサーはシングルバンドです。
マルチバンドコンプは、帯域を2~4つ程度に分割し、それぞれに別のコンプをかけ、その後でそれらの信号をまとめるタイプのものです。
マルチバンドコンプのメリットは、狙った帯域だけを圧縮できることです。例えば、低域が大きくなりすぎたときに、低域のみを圧縮して、高域はそのまま通過させるというようなことができます。
マルチバンドコンプを使えばより緻密なミキシングができ、クリアで音圧のあるサウンドをつくれるようになります。
初心者の方は、まずシングルバンドコンプの使い方を習得してから、マルチバンドコンプを使うようにするとよいでしょう。
おすすめコンプレッサーVSTプラグインソフト
Pro C2 / FabFilter
使いやすい万能デジタルコンプ
Pro C2 / FabFilter は、万能のデジタル系コンプレッサーです。
グラフィカルなインターフェースで、音がどのように変わっているかわかりやすく、コンプの使い方がよくわからないという初心者の方でも安心して使えます。
追加でコンプレッサーを購入するなら、まずこれを導入することをおすすめします。
- 8種類のキャラクター(クリーン、クラシック、オプト、ボーカル、マスタリング、バス、パンチ、パンピング)
- MS処理対応でセンターとサイドに別々にコンプ可能
- サイドチェーン機能で他のトラックからコンプをトリガー可能
- サイドチェーンにHP、LPフィルターあり
- ルックアヘッド機能でアタックを完全に圧縮することが可能
- オートゲイン機能あり
- オートリリース機能で自動でリリースタイムを設定可能
- 4倍までのオーバーサンプリングでエイリアスノイズを低減可能

SSL G-Master Buss Compressor / Waves
定番バスコンプ
SSL G-Master Buss Compressor / Waves は伝説的なミキシングコンソール SSL (Solid State Logic) 4000Gシリーズのマスターバスコンプレッサーのモデリングプラグインです。
マスタートラックやドラムバスなどで、薄めに圧縮すると締まりのあるまとまった音になります。
タイトなミックスをつくる上で、バスコンプは不可欠なツールです。バスコンプの中でも、有名で評価の高い定番の製品です。
収録されているバンドル
– SSL 4000 Collection バンドル
– Studio Classics Collection

dbx 160 Compressor Limiter / Waves
ドラム用定番コンプ
dbx 160 Waves は、VCA式アナログコンプの名機 dbx 160 のモデリングプラグインです。
dbx 160 は、ドラム用の定番コンプです。速いアタックタイムで、ドラムのアタックをつぶすとパンチ感を出すことができます。
定番バンドルには収録されていません。

VC 160 / Native Instruments
ドラム用定番コンプ
VC 160 / Native Instruments は、VCA式アナログコンプの名機 dbx 160 のモデリングプラグインです。
Native Instruments のプラグインバンドル Komplete Ultimate に収録されています。


CLA-2A Compressor Limiter / Waves
定番ボーカル向けコンプ
CLA-2A / Waves は、有名なコンプレッサー Teletronix LA-2A のモデリングプラグインです。
オプト(光学)式のコンプレッサーで、アタック、リリースの反応がゆるやかで、ナチュラルでマイルドなコンプ感が得られます。ボーカルやベースなどのダイナミクスを整えて存在感を高めるのに最適です。
収録されているバンドル
– CLA Classic Compressors バンドル
– Horizon バンドル

VC 2A / Native Instruments
定番ボーカル向けコンプ
VC 2A / Native Instruments は、オプト式コンプの名機 LA-2A / Teletronix のモデリング・プラグインです。
Native Instruments のプラグインバンドル Komplete Ultimate に収録されています。


CLA-76 Compressor Limiter / Waves
定番ドラム向けコンプ
CLA-76 Compressor Limiter / Waves は、FET式コンプの名機 Urei 1176 のモデリングプラグインです。
非常に速いアタックとリリースが特徴で、ドラムやボーカルにパンチ感を加えるのに最適です。
収録されているバンドル
– CLA Classic Compressors バンドル
– Horizon バンドル

VC 76 / Native Instruments
定番ドラム向けコンプ
VC 76 / Native Instruments は、FET式コンプの名機 1176 / Urei のモデリングプラグインです。
ドラムにパンチ感を加えるのに最適です。
Native Instruments のプラグインバンドル Komplete Ultimate に収録されています。


API 2500 / Waves
バスコンプに最適
API 2500 / Waves は、VCA式コンプの名機 API 2500のモデリングプラグインです。
パラメーターが豊富で、クリーンな音からアナログ感のある音、ソフトな圧縮からパンチ感あるサウンドまで幅広い音作りができます。
バスコンプに最適です。
収録されているバンドル
– API Collection バンドル
– Studio Classics Collection バンドル

V-Comp / Waves
バスコンプに最適
V-Comp / Waves は、アナログコンプの名機 Neve 2254 のモデリングプラグインです。
Neve 2254 はダイオードブリッジ式のコンプレッサーで、ダークであたたかみのあるサウンドが特徴です。圧縮をかけないで通すだけでもアナログ的な色付けができます。
バスコンプに最適です。
収録されているバンドル
– Gold バンドル
– Platinum バンドル
– Diamond バンドル
– Horizon バンドル
– Studio Calssics Collection バンドル

PuigChild 660, 670 / Waves
定番真空管コンプ
PuigChild 660, 670 / Waves は、真空管式コンプの名機 Fairchild 660, 670 のモデリングプラグインです。
660はモノラル用、670はステレオ用です。670では、Left/Right のチャンネル、または、Mid/Sideのチャンネルに個別にコンプをかけられます。
真空管ならではのあたたかみのある音色で、バスコンプに最適です。
収録されているバンドル
– Horizon バンドル

Vari Comp / Native Instruments
定番真空管コンプ
Vari Comp / Native Instruments は、真空管式コンプの名機 Manley Vari-Mu Compressor のモデリングプラグインです。
真空管ならではのあたたかみのある音色で、バスコンプに最適です。
Native Instruments のプラグインバンドル Komplete Ultimate に収録されています。


Pro-MB / FabFilter
万能マルチバンドコンプ
Pro-MB / FabFilter は、万能のデジタル系マルチバンドコンプレッサーです。
グラフィカルなインターフェースで直感的に使え、初心者の方でも使いやすい製品です。操作性が非常によく、効率よく作業できます。
マルチバンドコンプを購入するなら、まずはこれがおすすめです。

C6 Multiband Compressor / Waves
マルチバンドコンプ+ダイナミックEQ
C6 Multiband Compressor / Waves は、4バンドのマルチバンドコンプと2バンドのダイナミック EQを合体させたプラグインです。
マルチバンドコンプで広い帯域を処理しつつ、ダイナミックEQでピンポイントの処理をするということができる便利なプラグインです。
定番のバンドルには入っていませんが、単品購入でも安いのでおすすめです。

C4 Multiband Compressor / Waves
シンプルなマルチバンドコンプ
C4 Multiband Compressor / Waves は4バンドのオーソドックスなマルチバンドコンプレッサーです。
Wavesユーザーの方がマルチバンドコンプを導入するなら、まずこれをおすすめします。
Gold以上のバンドルに入っているのでお得に購入できます。
収録されているバンドル
– Gold
– Platinum
– Diamond
– Horizon

Rough Rider 3 / Audio Damage(フリー)

Rough Rider 3 / Audio Damage は無料のドラム向けのコンプレッサーです。
Rough Rider 3 / Audio Damage - Plugin BoutiqueOTT / Xfer Records(フリー)
OTT / Xfer Records は無料のマルチバンド・コンプレッサーです。
OTT / Xfer Records - Plugin BoutiqueMCompressor / MeldaProduction(フリー)

MCompressor / MeldaProduction は、エクスパンダーやノイズゲートとしても使えるフレキシブルな無料コンプレッサープラグインです。
MCompressor / MeldaProduction - Plugin BoutiqueKotelnikov / Tokyo Dawn Records(フリー)
TDR Kotelnikov / Tokyo Dawn Records は無料のバス・コンプレッサーです。音色やパンチ感を損なうことなくダイナミクスを調整できます。
TDR Kotelnikov | Tokyo Dawn Records
Feedback Compressor II / Tokyo Dawn Records(フリー)
Feedback Compressor II / Tokyo Dawn Records はフィードバックタイプの音量検知回路を用いた無料のコンプレッサーです。控えめで自然なコンプ感が得られます。
TDR Feedback Compressor II | Tokyo Dawn Records
まとめ
コンプレッサーを使いこなせるようになると、ミックスの質が格段に向上します。この記事を参考に、よいコンプレッサーを選んでください。
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