ミックスの音圧を十分に上げるのは、DTMにおいてもっとも難しいことのひとつです。音圧を上げるための主な方法は下記の7つです。
音圧を上げる方法
- マキシマイザーを使う
- 音数を減らす
- 全周波数帯域をバランスよく使う
- 立体的にバランスよく配置する
- 不要な音をカットする
- 圧縮する
- 倍音を加える
この記事では、これらの6つの方法について解説します。
音圧とは
音楽制作において「音圧」とは、「聴いた感じでの音の大きさ」のような意味で使われています。
再生機器のボリュームを一定にして音源を再生したとき、音圧が高い音源は音が大きく聴こえ、音圧が低い音源は音が小さく聴こえます。
つまり、音圧とは同じボリュームで再生したときの、聴感上の音の大きさのことです。
音圧は感覚的なものであるため、数値で示すことはできません。
音圧を上げる方法
マイキシマイザーを使う
音圧を上げる方法で、もっとも手っ取り早いのはマキシマイザー(Maximizer)を使うことです。
マイキシマイザーとはリミッターの一種で、音圧を上げ用に設計されているものです。
操作方法は非常にかんたんでピーク値を設定して(通常0dB~-0.3dBぐらい)スレショルドを下げていくだけです。
音圧が適正になった位置にスレショルドを設定します。
マキシマイザーは、各社からさまざまな製品が発売されています。
定番はWaves社のL2、L3や、FabFilter社のPro-L2、iZotope社のマスタリング用総合プラグインOzoneなどです。
L2、L3はWaves社のプラグインバンドル Horizon に収録されています。
音数を減らす
音数を減らしたほうが、音は大きく、音圧があるように聴こえます。
直感的には、音をたくさん重ねたほうが音が大きくなるように思うでしょう。
しかし、実際には音を重ねるほど音は小さく感じられます。
なぜかというと、音がたくさん鳴っていればいるほど、ひとつひとつの音に割り当てられるスペースが小さくなるからです。
そのため、目立たせたいパートに十分なスペースを割り当てることができず、音が小さく聴こえるのです。
例えば、キック、ベーススネア、ハンドクラップ、ピアノ、シンセ、ギーター、リード、ボーカル、コーラス、シンバルが同時に鳴っているとします。
このとき、ボーカルを大きく聴かせたいと思っても、他のパートがスペースを使ってしまうため、ボーカルを大きくするための十分なスペースを確保することができません。
もし、キック、ベース、ボーカルのみが同時に鳴っているアレンジであればどうでしょうか。
この場合は、ボカールを大きくするためのスペースが十分にあるので、ボーカルを大きく聴かせることができるのです。
全周波数帯域をバランスよく使う
低域から高域までのスペースをバランスよく使うことで、音を大きく、音圧があるように聴かせられます。
例えば、多くのパートが中域に固まっているとします。
低域や高域にはスペースが残っているにもかかわらず、中域はいっぱいになってしまっているため、個々のパートのスペースが小さくなります。
低域から高域まで、まんべんなく音を配置すれば、それぞれのパートためのスペースを十分に確保できます。
このため、ひとつひとつの音を大きく鳴らすことができるのです。
立体的にバランスよく配置する
個々のパートを上下、左右、前後にバランスよく立体的に配置することで、個々の音を大きく、音圧があるように聴かせることができます。
空間をうまく使えば、個々のパートのためのスペースを確保できるので、ひとつひとつの音を大きく鳴らすことができるのです。
一般的に、目立たせたいパートを一番前の真ん中に置き、あまり重要でないパートは、両サイドや奥に置かれます。
音の上下は、音の周波数によって決まります。
周波数の高い音は上で鳴っているように聴こえ、周波数の低い音は下で鳴っているように聴こえます。
音の左右は、パンを使って調整します。
音の前後は、音量、周波数特性、トランジェント、残響成分によって決まります。
音量が大きい音は前から、小さい音は後ろから聴こえます。
高域成分の多い音は前から、高域成分の少ない音は後ろから聴こえます。
トランジェントが強い音は前から、弱い音は後ろから聴こえます。
トランジェントとは、音の立ち上がり、鳴り始めの部分のことです。
残響成分の少ない音は前から、多い音は後ろから聴こえます。
各パートを3次元空間に適切に配置し、それぞれのパートのためのスペースを十分に確保できれば、音は大きく聴こえます。
不要な音をカットする
不要な音をカットしてスペースを空ければ、大きく鳴らしたい音のためのスペースを確保でき、音圧を上げることができます。
イコライザーで以下の帯域をカットします。
- キック、ベース : 30Hz以下をカット
- 30Hz以下の音は、ほとんどの再生環境では再生できないのでカットします。
-
キック、ベース以外 : 100~150Hz以下をカット
- 主に中高域を使う楽器でも、低域成分が出ています。
この低域成分をカットすれば、キックやベースのためのスペースを確保できます。
- 高高域の必要のないパート : 17~20kHz以上をカット
- 高域をいっぱいまで使う必要のないパートは、17~20kHz以上をカットします。
この帯域は、あまり聴こえないので必要がなければカットしましょう。
圧縮する
コンプレッサーなどで音を圧縮すれば、音は大きく、音圧があるように聴こえます。
コンプレッサーを使って、音の大きな部分を圧縮してから、全体をブーストすれば、音は大きく聴こえます。
倍音を加える
高域成分がある音のほうが、高域成分がない音よりも大きく、音圧があるように聴こえます。
エンハンサーなどを使って倍音を加えれば、実際にエネルギーが増えた以上に音が大きく聴こえるようになります。
まとめ
音圧を上げる6つのコツを紹介しました。
簡単にまとめておきます。
音圧を上げる方法
- 音数の少ないアレンジにする
- 全周波数帯域をまんべんなく使う
- 立体的にバランスよく配置する
- EQで不要な音をカットする
- コンプレッッサーで圧縮する
- エンハンサーで倍音を加える