おすすめ吸音材・防音材!貼り方・位置も解説【DTM・音楽スタジオ用】

DTMやミキシングをする上で、部屋・スタジオの音響特性を整えることは重要です。音響特性が悪ければ、周波数特性がくずれたり、定位が不明瞭になるなどして、適切なモニタリングをすることはできません。部屋の音響特性を整えるには、吸音材や拡散材を適切に設置する必要があります。 この記事では、吸音材、拡散材の種類や選び方・設置位置などについて解説し、DTM・音楽スタジオ向けのおすすめ吸音材を紹介します。
吸音、防音、遮音の違い
吸音とは音を吸収すること
吸音とは、音を吸収することです。音の反射を防いだり、音が透過するのを防いだりすることができます。 過度な残響を減らしたり、特定の周波数が強調される部屋なりを防いだりします。 吸音材としてよく使われるのは、グラス・ウール、ロック・ウール、ウレタン・フォームなど、小さな穴がたくさんある多孔質状の素材です。 音が吸音材の穴を通るときの摩擦により、音の振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、音を消します。
遮音とは音を遮断すること
遮音とは、音を遮断することです。遮音材に向かってきた音のほとんどを反射させることで、音が透過するのを防ぎます。 部屋の音が外に漏れることや、外部の音が部屋に入ってくるのを防ぎます。 遮音には、鉄やコンクリートなどの重い素材が有効です。
防音とは音の出入りを防ぐこと
防音とは、内部の音が外部へ漏れないように、あるいは、外部の音が内部に入ってこないようにすることです。吸音や遮音を組み合わせて防音を達成します。
吸音・拡散の目的
吸音材や拡散材を設置する目的は、残響の大きさや長さを適度なものにすることと、リスニング・ポジションでの周波数特性がフラットになるようにすることです。 周波数特性がフラットでなければ、スピーカーから出ている音と、あなたが実際に聴く音との周波数特性が異なってしまい、適切なミキシングをすることができません。また、残響が大きすぎたり長すぎたりすれば、定位や音の輪郭が不明瞭になり、モニタリングに支障をきたします。このような問題を防ぐために、吸音材や拡散材を適切に設置することが必要になります。
吸音材と拡散材とは
DTMなどでのホーム・スタジオの音響特性を整えるのに使われるのが吸音材と拡散材です。 吸音材とは、音を吸収して音の反射を抑制します。 拡散材とは、音をいろんな方向に拡散して反射させるものです。音の周波数特性を変えることなく、フラッター・エコーや定在波の発生を防ぎます。 フラッター・エコーとは、平行面の間で音が反射を繰り返し、残響がなかなか減衰しない現象のことです。 定在波(定常波)とは、平行面の間で音が反射を繰り返すときに、壁に入射する音と、壁から反射する音との位相がそろったときに発生する音波のことです。入射音と反射音の振幅が足し合わされ増幅されるため、定在波の周波数の音が強調されて聴こえます。定在波の周波数は、平行面の距離に応じて決まります。
吸音・拡散材の種類
吸音板

吸音フォーム

バストラップ

拡散材

防音・遮音シート

防音・遮音には、重量のある薄いシートが用いられます。 吸音材のように壁の一部に設置するのではなく、壁に隙間なく貼る必要があります。 カーテンのような垂らすだけでも一定の効果はありますが、最大限に効果を発揮させるためには、隙間なく設置することが重要です。 例えば、マンションなどで隣の住戸との防音をしたい場合には、スタジオの隣の住戸側の壁に隙間なく防音・遮音シートを貼ると効果的です。 基本的に、防音・遮音シートは吸音材と併用します。まず防音・遮音シートを貼り、その上に吸音材を貼ります。これにより、遮音材による過剰な反射を防ぐことができます。
吸音・拡散材の設置位置
一次反射点に設置する
吸音材を設置する場所は、壁、天井の一次反射点です。一次反射点とは、スピーカーから出た音が、壁、天井で一度反射して、リスニング・ポジションに届くときの反射点のことです。 下図のオレンジ色の部分に吸音材を設置します。オレンジ色の点線の部分は、天井に設置します。

スピーカーの後ろの壁の一次反射点
スピーカーの後ろは、もっとも大きな反射音が出やすい箇所のため、最優先で吸音材を設置すべきです。スピーカーの後ろには、低音がまわり込むため、厚め吸音板・吸音フォームを設置して低音をカットします。
側壁の一次反射点
吸音板・吸音フォームを設置します。
天井の一次反射点
吸音板・吸音フォームを設置します。
リスニング・ポジションの後ろの壁の一次反射点
狭い部屋・スタジオの場合は、吸音板・吸音フォームを設置します。 広い部屋・スタジオmの場合は、拡散材が適しています。
部屋のコーナー
バストラップを設置します。
大きな反射音を優先して対策する
予算が十分でなく、上記のすべての位置に設置できない場合は、大きな反射音が返ってくる箇所を優先しましょう。大きな反射音が返ってくる箇所というのは、スピーカー、反射点、リスニング・ポジションを結んだ距離が近いところです。 部屋の形状や、スピーカーの設置位置などにもよりますが、多くの場合スピーカーの後ろに最優先で吸音材を設置するのが効果的です。その次に、部屋の幅が狭い場合は側壁に、部屋の幅が広い場合は背面の壁に設置するとよいでしょう。
おすすめ吸音材
DTMや音楽スタジオ、音楽リスニングにおすすめの吸音材は7~10cm程度の厚めのものです。厚めの吸音材は、低域から高域まで、まんべんなく吸音できるからです。 3~5cm程度の薄めの吸音材では、中域から高域しか吸音できないため、DTMやミキシングの作業には、あまり適していません。薄めの吸音材は、ボーカルブースなどの低域の吸音があまり必要ない場合に適しています。
Auralex / Studiofoam Wedges

モニタースピーカーの後ろや、部屋の側面、背面、天井などオールマイティーに使える吸音材です。 7.5cmや10cmの暑めのものがおすすめです。 サイズ 60 x 60cm 厚さは2.5cm(Wedges 1)、5cm(Wedges 2)、7.5cm(Wedges 3)、10cm(Wedges 4)の4種類があります。
- 60×60×2.5, 5, 7.5, 10
Auralex / DeskMAX

モニタースピーカーの後ろ側に設置するのにおすすめの吸音材です。 厚さ7.6cmで、スピーカーの後ろにまわりこみやすい低音の吸音に効果があります。 スタンド付きで、かんたんに設置できます。
- 60×60×7.6cm
- スタンド付
Auralex / ProMAX

側面、背面の壁に設置するのにおすすめの吸音材です。 厚さ7.6cmで、低音の吸音に効果があります。 スタンド付きで、かんたんに設置できます。
- 60×60×7.6cm
- スタンド付
Auralex / LENRD Bass Traps

部屋のコーナーに設置して低域をカットするバストラップです。
Auralex / Stand-Mounted LENRD

バストラップとスタンドがセットになった製品です。 部屋のコーナーに設置して低域をカットします。 高さ調整可能なスタンドつきで、かんたんに設置できます。 賃貸マンションなどで、吸音材を壁に貼り付けることが難しい方におすすめです。
Auralex / Studio6 Bass Trap with Stand

バストラップとスタンドがセットになった製品です。 部屋のコーナーに設置して低域をカットします。
Auralex / Studiofoam Pyramids

サイズ 60 x 60cm 厚さは5cm(Pyramids 2)、10cm(Pyramids 4)の2種類があります。 10cmの厚めのものがおすすめです。
- 60×60×5, 10cm
Sonex / PYR、OPYR

PYR は、可燃性のウレタン製の吸音フォームです。 OPYR は、不燃性のメラミン製の吸音フォームです。 サイズ 61 x 61cm 厚さは5cm(PYR2、OPYR2)、7.5cm(PYR3、OPYR3)、10cm(PYR4、OPYR4)の3種類があります。
- 61×61×5, 7.5, 10
Sonex / VLW

Sonex / VLW は、不燃性のメラミン製の吸音フォームです。 表面にコーティングがないものとあるもの(品番の末尾がH)とがあります。コーティングがあるものは、水拭きでのクリーニングが可能です。 サイズ 61 x 122cm 厚さは3.8cm(VLW-35, VLW-35H)、6.4cm(VLW-60, VLW-60H)の2種類があります。
- 61×122×3.8, 6.4
Sonex / UNX

Sonex / UNX は、可燃性のウレタン製の吸音フォームです。 サイズ 61 x 122cm 厚さは5cm(UNX2)、7.5cm(UNX3)、10cm(UNX4)の3種類があります。
- 61×122×5, 7.5, 10
Ultimate / UA-KIT-SBI

厚さ5cmの薄めの吸音材です。 ボーカルブースなどにおすすめです。
- 60×60×5cm
Yopin 吸音材 30x30x5cm 両面テープ付き

厚さ5cmの薄めの吸音材です。
Route1 吸音材 30x30x5cm

サウンドエンジニア早川和男氏が監修している吸音材です。
タンスのゲン 吸音材 50×50x5cm

50cm角の大きめなサイズの吸音材です。
ArrowZoom 吸音材 25x25x5cm

25cm角の小さめなサイズの吸音材です。
Arrowzoom バストラップ 12x12x24cm

小さめなサイズのバストラップです。
Evenreach 吸音材 30×30×0.9cm

フェルト素材のシンプルなデザインの薄めの吸音材です。
吸音ボード

本格的なスタジオをつくる方におすすめです。
おすすめ防音材・遮音材
Yopin / 遮音シート 厚さ2mm 面密度 約3.5kg/㎡ 縦30cm×横30cm 24枚

30cm角の手軽なサイズの遮音シートです。 厚さは2mmで、厚めのため高い遮音性能があります。1000Hzの透過損失が23dBとなっています。 遮音材は重いため大きなロールタイプのものは、素人が一人で設置するのは難しいです。小さなシートのものは、軽くかんたんに設置できます。1枚で300g程度です。 表面は不織布で、本体は難燃性の塩化ビニル製です。 設置がかんたんなので、ホームスタジオに後付で遮音シートを貼りたい方におすすめです。
防音ファストラボ / 遮音シート 厚さ1.2mm 面密度 約2.1kg/㎡ 縦30cm×横30cm 24枚

30cm角の手軽なサイズの遮音シートです。 厚さは1.2mmで、上記のYopinのものより薄いため遮音性能も低くなっています。1000Hzの透過損失が19dBとなっています。 1枚で190g程度と軽量なので、設置しやすいというメリットがあります。 表面は不織布で、本体は難燃性の塩化ビニル製です。 設置がかんたんなので、ホームスタジオに後付で遮音シートを貼りたい方におすすめです。
大建工業 / 遮音シート 940SS・940SSE GB03053 1.2mm厚さ×940mm×10m

大建工業(Daiken) / 遮音シート 940SS・940SSE GB03053 は、切断・加工が容易な塩化ビニル製の防音・遮音シートです。 1000Hzの透過損失が19dBとなっています。 大きなロールタイプは価格が安いですが、設置が難しいので、本格的な工事を行う音楽スタジオの制作などにおすすめです。 940SS・940SSEは同じものです。940SSは西日本用、940SSEは東日本用です。
大建工業 / 遮音シート 455H GB0307

大建工業(Daiken) / 遮音シート455H GB0307 は、特殊非加硫ゴム製の防音・遮音シートです。 1000Hzの透過損失が28dBとなっていて、非常に高い遮音性能があります。 本格的な音楽スタジオにおすすめです。
おすすめ拡散材
Auralex / Sustain Metro

音を拡散させて定在波の発生などを防ぐ拡散材です。 側面や背面の壁に設置します。広めのスタジオにおすすめです。
- 59 x 59 x 6.6cm
吸音材・防音材の貼り方
吸音材を壁などに貼るには、両面テープやグルーガンなどがおすすです。壁に両面テープや接着剤の跡を残さないようにしたい場合は、まず壁に養生テープやマスキングテープを貼って、その上に両面テープやグルーガンを使うのがおすすめです。 防音材は小さな軽いものであれば両面テープで、大きなシート状のものはタッカーで貼るのがおすすめです。
Auralex / EZ-Stick Pro

Auralex / EZ-Stick Pro は、吸音材用の接着シートです。
Auralex / Temp Tabs

Auralex / Temp Tabs は、吸音材用のマジックテープです。
3M / はがせる両面テープ

両面テープは強力なものがおすすめです。
グルーガン・ホットボンド

グルーガン・ホットボンドは樹脂を熱で溶かして接着するものです。グルーガンなら両面テープよりも強力に接着できます。
養生テープ・マスキングテープ

養生テープ・マスキングテープは、かんたんにはがせて貼った跡が残らないテープです。
タッカー

防音シートを壁下地などに留めるのに使えるタッカーです。
まとめ
部屋の環境はそれぞれに形、大きさ、素材、構造などが異なるので、万能の解決法というものはありません。この記事を参考にして、実際に音を聴きながら、いろいろと調整してみてください。