物理モデル音源(物理モデリング・シンセシス:フィジカル・モデリング・シンセシス:Physical Modeling Synthesis)とは、シンセサイザーの音響合成方式のひとつで、生楽器の物理的な構造をシミュレートすることで、音色を合成する方式のことです。
物理モデル音源の仕組み
物理モデル音源は、最初の打撃音を生成するエキサイター(Exciter)と、共振(共鳴)音を生成するレゾネーター(Resonator)とで構成されます。
レゾネーターは、オブジェクト(Object)と呼ぶこともあります。
例えば、ドラムであれば、スティックがエキサイター、ドラム・ヘッド(皮)と胴がレゾネーターあたります。
ギターであれば、ピックがエキサイター、弦とボディがレゾネーターにあたります。
エキサイターで生成された打撃音が、レゾネーターへ送られ、レゾネーターで共振された音が出力へ送られます。
エキサイターには、仮想のマレット音やホワイト・ノイズなどが使われます。
パラメーターを調整することで、マレット、スティック、ピック、弓、吹込みなどをシミュレートできます。
レゾネーターには仮想の角材、マリンバの鍵盤(裏側がアーチ状にくり抜かれた角材)、弦、膜、板、管などがあります。
素材には、ガラス、金属、ゴム、ナイロン、木などがあります。
物理モデル音源の音作り
物理モデル音源は、減算合成やFM合成などでは不可能なリアルなドラム、ピアノ、木琴、鉄琴、弦楽器などの音を生成できます。
レゾネーターを複数つなげることで、より複雑でリアルな音をつくることができます。
例えば、弦のレゾネーターと板のレゾネーターを組み合わせるとギターをシミュレートできます。
膜のレゾネーターと管のレゾネーターを組み合わせるとタムやバス・ドラムをシミュレートできます。
エキサイターとレゾネーターの組み合わせや、レゾネーターの素材、大きさの設定によっては、現実には存在しない楽器の音をつくることができます。
例えば、マレットで叩く管楽器や、弓で弾くシンバル、ガラスの管楽器、金属膜のドラムなどです。
物理モデリングを使用したシンセサイザー
Chromaphone 2 / AAS
Chromaphone 2(クロマフォン2)は、Applied Acoustics Systems社の物理モデリング・シンセサイザーです。
2つのレゾネーターをフィードバックさせて、よりリアルな音色をつくることができます。
Pianoteq 6 / Modartt
Pianoteq 6(ピアノテック 6) / Modartt(モダート)は、物理モデリングによるピアノ・シンセサイザーです。
複雑な共鳴もシミュレートしたリアルなピアノ音色を作ることができます。
Volca Drum / Korg
Volca Drum(ヴォルカ・ドラム) / Korg(コルグ) は、アナログ・モデリングによるドラム音のエキサイターと、弦、管タイプのレゾネーターを使用したデジタル・ドラム・シンセサイザーです。