TR-909 (ティーアール・キュウマルキュウ) は、Roland (ローランド) が1983年に発売したドラム・マシンのことです。1980年代後半から90年代のハウスやテクノで多用された、伝説的なドラム・マシンです。
- TR-909 の歴史
- TR-909 を使用した有名曲
- Rhythim Is Rhythim – Strings of Life (1987)
- M|A|R|R|S – Pump Up The Volume (1987)
- Mr Fingers – Can You Feel It (1988)
- Inner City – Good Life (1988)
- 808 State – Pacific State (1989)
- Aphex Twin – Heliosphan (1992)
- Underworld – Born Slippy (Nuxx) (1996)
- Jeff Mills – The Bells (1996)
- Thomas Bangalter – Spinal Scratch (1996)
- Daft Punk – Revolution 909 (1997)
- Björk – Hunter (1997)
- Underworld – Two Months Off (2002)
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TR-909 の歴史
1983年に発売
TR-909 は、1983年に日本の電子楽器メーカーの Roland から発売されました。
当時の価格は189,000円(1,195ドル)でした。
TR-909 は、1980~82年にかけて発売された TR-808 の後継機にあたります。
アナログ回路とサンプリングのハイブリッド
TR-808 は、すべての音をアナログ電子回路で合成していますが、TR-909 はアナログ電子回路による合成とサンプリング方式を併用しています。
8つのパートの内の6つ、バス・ドラム、スネア、3つのタム、リム・ショット/ハンド・クラップにはアナログ回路が、残りの2つのパート、ハイ・ハット、シンバルにはサンプリング方式が用いられています。
ハイ・ハットとシンバル にサンプリングを用いたのは、アナログ回路による合成では納得のいく音色が得られなかったからです。
ハイ・ハットとシンバルの音色は、本物のハイ・ハットとシンバルの音を録音して使用しています。
初のMIDI搭載ドラム・マシン
TR-909 は、史上初のMIDI搭載のドラム・マシンです。
MIDIに対応していないローランドの旧製品と同期させるために、DIN Sync も搭載しています。
ちなみに、史上初のMIDI搭載シンセサイザーは TR-909 と同じく1983年に発売された Jupiter-6 / Roland と Prophet-600 / Sequential Circuits です。
サンプリング式のドラム・マシンに対抗できず
TR-909 は、音色がリアルでなかったため、当時の市場では受け入れられず、商業的には失敗に終わりました。
TR-909 が発売された1983年当時の市場では、本物のドラムのような音色のドラム・マシンが求められていました。
TR-909 はアナログ電子回路による合成音のため音色がリアルではなかったため、本物のドラム音を録音したサンプリング式ドラム・マシンに、音色のリアルさの面で対抗することができませんでした。
競合製品となったサンプリング式ドラム・マシンには、1981年発売の Oberheim DMX / Oberheim や、1982年発売の LinnDrum / Linn Electronics などがあります。
発売開始から1年での生産終了と後継機 TR-707 の発売
TR-909 は、リアルな音色を求める市場のニーズに応えられなかったため、10,000台を製造したあと発売開始から1年で1984年に販売終了になりました。
同じ年に、TR-909 の後継機となる TR-707 が発売されました。
TR-707 は、全音色にサンプリング方式を使用しています。
他のドラム・マシンでは得られない独特な音色
TR-909 の音色には、他のどのドラム・マシンとも異なる独特のハードさやパンチ感があります。
TR-808 は、TR-909 と同じくアナログ電子回路による合成を用いていますが、音色はかなり異なり、とりわけファットなキックやシャープなスネアに特徴があります。
サンプリング式の LinnDrum や Oberheim DMX の音色は、自然でソフトな特徴があります。
ハウス・テクノにより評価が高まる
TR-909は、販売終了後の80年代後半になって、シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノに使用されたことで評価を高めました。
TR-909 は、発売期間に評価を得られなかったため、中古市場に安価で出回りました。
これを購入したシカゴやデトロイトのアーティストが、TR-909 の独特なハードなサウンドの魅力を発見し、ハウスやテクノのレコードに用いました。
シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノは、アメリカだけでなくヨーロッパでも人気となり、それと共に、TR-909 の評価も上がりました。
中古価格の高騰とクローン・復刻機の発売
TR-909 は、ハウスやテクノで必須の機材となり、中古市場では発売当時の価格を超える高値がつくようになりました。
後に、ハード・ウェア、ソフト・ウェアを問わず多数のクローン機が発売されました。
2017年には、本家であるローランドからも 復刻機である TR-09 が発売されています。
伝説的なドラム・マシンと評価される
ハウスやテクノに多大な影響を与えた TR-909 は、伝説的なドラム・マシンとして、現在でも高い評価を受けています。
その評価は、同時代にローランドが生み出した歴史的な名機である TR-808 や TB-303 と並ぶものと言えるでしょう。