この記事では、サチュレーターとは何かについて解説し、おすすめのサチュレーターVSTプラグインソフトを紹介します。
- サチュレーターとは
- サチュレーターの種類
- サチュレーターの使い方
- おすすめサチュレーターVSTプラグインソフト
- Saturn 2 / FabFilter
- Decapitator / SoundToys
- Oxford Inflator / Sonnox
- Dist COLDFIRE / Arturia
- Dist TUBE-CULTURE / Arturia
- Dist OPAMP-21 / Arturia
- Neutron Exciter / iZotope
- Dirt / Native Instruments
- Spectre / Wavesfactory
- Dirty Tape / Softube
- Saturation Knob / Softube (フリー)
- Tube Saturator Vintage / Wave Arts(フリー)
サチュレーターとは
サチュレーター(Saturator)とは、テープや真空管などのアナログ機器に過入力したときに生じる飽和感や歪みをシミュレートするエフェクトです。
サチュレーターは、原音にはない高長波歪み、倍音を発生させ、音にアナログ的なあたたかさや、パンチ、太さ、きらびやかさを加えます。
歪み系エフェクトの一種ですが、ディストーションのような激しい歪みではなく、ソフトな歪みを加えます。
サチュレーターの種類
サチュレーターには、テープとチューブ(真空管)、トランジスターの3つのタイプがあります。
テープ
テープは、テープマシン・テープレコーダーの音をシミュレートするタイプです。 テープの回転速度や回転ムラにより生じるピッチの揺れの深さ(ワウフラッター)、ノイズの量などを設定できるモデルが多いです テープ・サチュレーターは、すっきりとした奇数倍音を発生させます。また、ハイエンドをロールオフし、低域をブーストする傾向があります。
チューブ
チューブは、真空管アンプの音をシミュレートするタイプです。 チューブ・サチュレーターは、奇数倍音と偶数倍音を発生させます。テープと比較して、より暖かく、音楽的な音質です。
トランジスタ
トランジスタは、トランジスタを用いた回路の音をシミュレートするタイプです。 ハードクリップのような激しい歪みが特徴で、ギターを歪ませる用途などに適しています。ミックス時の倍音の微妙な調整には不向きです。
サチュレーターの使い方
サチュレーターは、個別のトラックにも、ドラムバス、マスターバスなどのバストラックにも、使うことができます。 例えば、下記のような使い方ができます。
ボーカルのヌケを良くする
ボーカルの高音成分が足りず音がこもりがちで、バックトラックに埋もれてしまっていることがあります。このような時に、サチュレーターで倍音を付加することで、高音成分成分を付加し、きらびやかでヌケのよい音にすることができます。
ベースの存在感を増す
倍音成分の少ないベースにサチュレーターをかけて倍音を増やすと、ミックスの中で埋もれているベースに存在感を加えることができます。ベースの倍音を増やすと、低域を再生しにくいイヤホンなどで聴いたときにも、ベースをはっきりと聴かせることができます。
バストラックでグリュー感を出す
バストラックでサチュレーターをかけると、各パートの音をギュッとまとめるグリュー効果が得られます。また、音圧を上げる効果もあります。
暖かみやアナログ感を加える
コンピューターだけで作った曲は、音が固くなりがちです。このような場合、マスタートラックにサチュレーターをかけることで、アナログ風の暖かみあるサウンドにすることができます。
おすすめサチュレーターVSTプラグインソフト
Saturn 2 / FabFilter
Saturn 2 / FabFilter は、グラフィカルなインターフェイスで使いやすいマルチバンド・サチュレーションプラグインです。
最大6つまでの帯域に分割できるマルチバンド機能を搭載していて、帯域ごとに個別にサチュレーションをかけることができます。
28種類の歪みタイプを選択可能です。定番の真空管やテープから、ギターアンプをモデルとした「Amp」、サウンドを激変させる「FX」など非常に歪みの種類が豊富です。ソフトなサチュレーションから激しいディストーションまでさまざまな歪みサウンドをつくることができます。
LFOやエンベロープフォロワーなどのモジュレーション機能でパラメーターを動的に変化させることもできます。
Decapitator / SoundToys
Decapitator は、クラシックなハードウェアをモデリングしたサチュレータープラグインです。
アナログ機器ならではのヴィンテージ感ある歪みを加えて、豊かで存在感のあるサウンドを生み出すことができます。
音がデジタル感があって硬いときに、Decapitatorで歪ませると、かんたんにいい感じの音になります。ミックスのクオリティを一段上げたい方に最適です。
数あるサチュレータープラグインの中でも、もっとも人気があるもののひとつで、プロのエンジニアの方もよく使っています。
Neve、API、Ampex、EMI、Thermionic Cultureなどの名機をモデリングした、5種類のアナログ・サチュレーション・モデルを搭載しています。
下部のStyleボタンで、モデリングした機器を選択します。
A – Ampex 350 tape drive preamp
E – Chandler/EMI TG channel
N – Neve 1057 input channel
T – Thermionic Culture Culture Vulture triode setting
P – Thermionic Culture Culture Vulture pentode setting
Driveノブは、入力ゲイン・歪みの強さを調整します。
Punishボタンは、入力に20dBのゲインを追加し、激しい歪みを生み出します。
中央下部の3つのノブは、プレ/ポストフィルターをコントロールします。Low Cut、Toneは、歪みセクションの前に処理を行い、High Cutは、歪みセクションの後に処理を行います。
Low Cutは、ハイパスフィルターのカットオフ周波数を調整します。Thumpスイッチをオンにするとカットオフ周波数がブーストされます。
Toneノブは、チルトEQで右に回すと音が明るくなり、左に回すと暗くなります。
High Cutは、6dB/Octaveのローパスフィルターのカットオフ周波数を調整します。Steepスイッチをオンにすると30dB/Octaveのキレの良いフィルターになります。
Outputには、AutoスイッチがありDrive量に応じて自動でOutputを調整し、音量を一定に保ちます。
Mixノブは、ドライ音とウェット音のバランスを調整します。
Oxford Inflator / Sonnox
Oxford Inflator は、トラックの音圧を高め音に迫力を加えることができるエフェクトです。Sonnoxのプラグインの中でも、もっとも人気があるもののひとつで多くのミキシングエンジニアが使用しています。
マスターバス、個別のトラックどちらにでも使用できます。
シンプルなパラメーターで使いやすいのも特徴です。「Effect」はエフェクトの強さを、「Curve」は音質の特性を調整します。
ミックス初心者でも、かんたんに使えミックスのクオリティを上げてくれます。
Dist COLDFIRE / Arturia
Dist Coldfire は、多機能でフレキシブルなディストーションプラグインです。
特定のハードウェアのクローンではなく、オリジナル設計のエフェクトです。
モダンな設計で使いやすく、これ一台でマイルドなサチュレーションから、破壊的なディストーションサウンドまで、幅広い歪みサウンドを生み出すことができます。
構成は、2ステージのディストーションセクション、ダイナミクスエフェクト、フィードバックエフェクト、モジュレーターとなっています。
2つのディストーションセクションはフレキシブルなルーティングが可能で、Serial、Parallel、Stereo、Mid/Side、Band Splitの5種類から選択できます。
ディストーションのタイプは、Bit Inverter、Bit Crusher、Wavefolder、Rectifier、Waveshaper、Transformer、Force、Tape、Tube、Germanium、Transistorの11種から選択できます。暖かなアナログ感ある歪みからデジタルのハードな歪みまで、多様な質感のサウンドを得られます。
ディストーションセクションの前段と後段には、それぞれフィルターが設置されています。
ダイナミクスエフェクトは、Compressor、Multiband、Limterの3種から選択できます。
フィードバックエフェクトは、サウンドを荒々しくし、過激なノイズを生み出します。
モジュレーションは、6つのスロットが用意されており、それぞれLFO、ファンクションジェネレーター、エンベロープフォロワー、ステップシーケンサーの4種から選択できます。
Dist TUBE-CULTURE / Arturia
Dist Tube-Culture は、ラック式の真空管ディストーションエフェクト Culture Vulture, Ultra Vulture / Thermionic Culture をモデリングしたプラグインです。
真空管ならではの暖かみあるディストーションサウンドが得られます。EQも内蔵されていて、これ一台ですばやく音を整えることができます。
Driveノブでは、歪みの量を調整します。
Biasノブでは、電流の量を調整します。Biasを下げると音が細くなり、上げると音が太くなりますが、上げすぎると音がまた細くなります。
Functionノブでは、歪みの種類を選択します。T(triode)は暖かみある偶数倍音をP(pentode)は、スッキリとした奇数倍音を生み出します。
Presenceスイッチは、高域の強調を調整します。
右側には、実機にはないMixノブが追加されています。
下段左のInputセクションには、チャンネルの選択、歪ませる前のローカット・ハイカットフィルター、ダイナミクスエフェクトがあります。
下段右のOutputセクションには、歪ませた後のローカット・ハイカットフィルター、チルトEQがあります。
Dist OPAMP-21 / Arturia
Dist OPAMP-21は、アンプに似たダイレクトなサウンドで知られるギターペダルのカルトクラシックにインスパイアされたディストーションとサチュレーションエフェクトです。DAW制作用に強化されたスタジオの伝説的なエフェクトで、ミックスカットのパンチ、ハーモニックカラー、純粋な攻撃性をあらゆるサウンドに追加します。
Neutron Exciter / iZotope
Neutron Exciter / iZotope は、ミキシング用総合プラグインNeutronに入っているマルチバンドサチュレーターです。
帯域を1~3バンドまでに分割し、個別にサチュレーターをかけることができます。
Retro, Tape, Tube, Warmの4つのサチュレーションタイプをXYパッドで自由にブレンドできます。
Dirt / Native Instruments
Dirt は、2ステージのサチュレーター・ディストーションプラグインです。
ソフトな歪みから激しい歪まで、幅広い歪みサウンドを生み出すことができます。
信号のルーティング、ブレンディングが柔軟に行え、通常のディストーションでは不可能なコントロールが可能です。
DirtはNative InstrumentsのプラグインバンドルKompleteに収録されています。
Spectre / Wavesfactory
Spectre は、EQ風の操作で使えるマルチバンドサチュレーター・エンハンサープラグインです。
一般的なマルチバンドサチュレーターでは、帯域ごとに分割して処理を行いますが、SpectreではEQをかけたサウンドと元のサウンドの差分にサチュレーターをかけ、元のサウンドとミックスします。
EQと同様にQを調整して、ピンポイントで狭い帯域を狙ったり、ゆるいカーブで広い帯域を狙ったりしてサチュレーションをかけることができ、繊細な歪みのコントールが可能です。
10種類のサチュレーションアルゴリズムが用意されています。
各バンドごとに処理するチャンネルをStereo、Left、Right、Mid、Sideから選択できます。
Spectre は、EQ風の操作で使いやすいマルチバンドサチュレーターです。ミックスのクオリティを上げるために持っておきたいプラグインです。
Dirty Tape / Softube
Dirty Tape / Softube は、シンプルで使いやすいテープサチュレータープラグインです。テープの飽和感と劣化をかんたんに再現できます。
Driveノブでサチュレーションを調整し、Dirtノブで音の劣化具合を調整します。
Stereo ModeをDe-coupledにすると、よりワイドなサウンドが得られます。
シンプルで使いやすいローファイプラグインをお探しの方におすすめです。
Dirty Tape / SoftubeSaturation Knob / Softube (フリー)
Saturation Knob / Softube は、ノブとスイッチがひとつずつのみのシンプルなサチュレータープラグインです。
アナログ系のプラグインに定評のあるスウェーデンのSoftube社が開発しています。
大きなノブはサチュレーションのかかり具合を調整し、スイッチでサチュレーションをかける帯域を選択します。
ベースに存在感を加えたり、ボーカルに倍音を加えてヌケをよくしたり、ドラムにパンチを加えるなど、多くの用途に使用できます。
Tube Saturator Vintage / Wave Arts(フリー)
Tube Saturator Vintage / Wave Arts は、真空管アンプをモデリングした無料のサチュレータープラグインです。
Tube Saturator Vintage / Wave Arts