DX7 は、1983年に Yamaha (ヤマハ) から発売されたデジタル・シンセサイザーです。FM合成を用いた独特のキラキラしたサウンドは、80年代に一世を風靡しました。
DX7 とは
史上、最も売れたシンセサイザー
DX7 は、日本の楽器メーカー Yamaha のデジタル・シンセサイザーです。1983年に発売、当時の価格は248,000円でした。商業的成功を納めた初のデジタル・シンセサイザーであり、歴史上もっとも売れたシンセサイザーのひとつです。1983~89年の販売期間に200,000台以上が販売されました。
FM合成による音色合成
DX7 は、音色合成にFM合成を用いています。FM合成は、独特のキラキラしたサウンドに特徴があります。FM合成ならではの、DX7 のサウンドは80年代の無数のヒットソングの中で聴くことができます。
難解な音色合成、プリセットの多用
FM合成を用いた DX7 は、減算合成のアナログ・シンセサイザーなどと比べて音作りが非常に難しいです。そのため、多くのユーザーは、DX7 の音色プログラミングを使いこなすことはできず、プリセット音色を使いました。
音色カートリッジを搭載
DX7 は、作成した音色の設定をカートリッジに保存したり、音色の設定をカートリッジから読み出したりすることができました。このカートリッジにより、プロなどが作成した音色のデータを購入することができました。今ではソフトシンセなどで当たり前になっている、音色のプリセット・データを販売、購入するという行為は、DX7 から始まりました。
液晶ディスプレイを搭載
DX7 は、音色を選んだり、パラメーターを調整したりするための液晶ディスプレイを搭載しています。現在では当たり前となっている液晶ディスプレイを用いたインターフェースは、DX7 から始まりました。
16 ポリフォニック
DX7 の同時発音数は 16 で、当時の主流であった 6 ~ 8 音から飛躍的に増加しました。
MIDI を搭載
DX7 は、1983年に制定されたMIDIを搭載しています。
DX7 とFM合成の歴史
FM合成とは
FM 合成 (Frequency Modulation Synthesis) とは、シンセサイザーの音色合成方式のひとつです。オシレーターの周波数に対して、高速の変調をかけることで音色を合成します。減算合成では不可能な非整数倍音を生成することができ、アナログ・シンセサイザーでは難しい、複雑な倍音を含む金属的な音などを合成することができます。
スタンフォード大学がFM合成を開発
FM合成は、1967年にアメリカのスタンフォード大学のジョン・チョウニング (John Chowning) 教授によって開発されました。
Yamaha がFM合成の独占的ライセンスを取得
1973 年に、Yamaha はFM合成の独占的ライセンスを獲得しました。FM合成を開発したスタンフォード大学は、FM合成の特許を取得し、実用化のためのライセンス先を探しました。多くのメーカーは FM合成を理解することができませんでしたが、Yamaha はすぐに理解しました。Yamaha はFM合成の実用性を研究した後で、独占的な使用権を獲得しました。
初のFMシンセ GS1 が発売
1980年に、Yamaha は初のFMシンセサイザー GS1 を発売しました。GS1はプリセット音色を選ぶだけで、ユーザーがパラメーターを操作して音色をつくることはできませんでした。GS1は260万円と高額であったため、普及には至りませんでした。
DX7 が発売
1983年に、Yamaha は DX7 を発売しました。248,000円という当時としてはリーズナブルな価格であった DX7は爆発的な人気を獲得し、商業的成功を納めた初のデジタル・シンセサイザーになりました。DX7のサウンドは、当時の無数のヒット曲の中に聴くことができます。
PCMシンセの出現により、FMシンセは衰退
1987年に Roland から D-50が、1988年には Korg から M1 が発売されました。これらのシンセサイザーは、実際の楽器の音などをサンプリングした PCM方式 を用いており、FMシンセよりもリアルな音色を出すことができました。PCMシンセの出現や、FMの音色が使い古されたことにより、FMシンセは衰退していきました。
FM合成 の特許が切れ、多くのメーカーからFMシンセが発売
1995年に、スタンフォード大学が所有していたFM合成の特許が切れました。これにより、様々なメーカーからFMシンセサイザーが発売されることになり、現在でも多数の製品が発売されています。
DX7 のデモ動画
現行のFMシンセサイザー
Reface DX / Yamaha
本家ヤマハによるDX7を小型化したようなFMシンセ
Digitone / Elektron
シーケンサー付きFMシンセ
Volca FM / Korg
DX7 互換のFMシンセ
FM8 / Native Instruments
DX7 をベースにしたソフトシンセ
DX7 V / Arturia
DX7 のクローン・ソフトシンセ
DX7 を使用した有名曲
Kool & The Gang – Fresh (1984)
ベースに DX7 を使用
Tina Turner – What’s Love Got To Do With It (1984)
フルートとエレピに DX7 を使用
Daryl Hall & John Oates – Out Of Touch (1984)
ベースに DX7 を使用
Chicago – Hard Habit To Break (1984)
エレピに DX7 を使用
a-ha – Take On Me (1985)
ベースに DX7 を使用
Whitney Houston – Saving All My Love For You (1985)
エレピに DX7 を使用