トランジェントシェイパーは、パーカッシブな音源のダイナミクスを調整するエフェクターです。
この記事では、トランジェントシェイパーの機能や仕組み、使い方について解説し、おすすめのVSTプラグインソフトを紹介します。
トランジェントとは
トランジェント(Transient)とは、「瞬間的な」という意味で、音楽制作の分野では、音の立ち上がりの部分のことを指して使われます。
音の立ち上がりとは、音量が急激に大きくなる部分です。例えば、バスドラムの鳴り始めや、ピアノの音の鳴り始めの部分です。
トランジェントシェイパーとは
トランジェントシェイパー(Transient Shaper)は、パーカッシブな音源のダイナミクスを調整するエフェクターです。
パーカッシブとは、「打楽器の」という意味です。パーカッシブな音とは、バスドラム、スネア、タム、シンバルなどのように音の鳴り始めで急激に音量が大きくなり、その後すぐに減衰して音が消えていくような音のことを指します。ドラムの音だけでなく、ベースやギター、ピアノなどもパーカッシブな音と言えます。逆に、パーカッシブでない音は、バイオリンなどの音の立ち上がりがゆっくりな音や、オルガンなどの音がすぐに減衰せず鳴り続ける音などです。
トランジェントシェイパーは、ドラムのアタック感を強調してパンチのある音にしたり、リリースを強調してファットなサウンドにしたりすることができます。
ドラム、ピアノ、ギター、ベースなどのアタックがはっきりしているパーカッシブな音であれば、どんな音源にも効果があります。
トランジェントシェイパーの仕組み
トランジェントを検出して動作する
トランジェントシェイパーは、音源のトランジェントを検出して動作します。
トランジェントは、ドラムやベース、ギター、ピアノなどの音の立ち上がりがはっきりとした音にあります。音の立ち上がりの弱いストリングスやシンセパッドなどの音では、トランジェントを検出せず、トランジェントシェイパーは動作しません。
音のアタックとディケイを増幅/減衰させる
トランジェントシェイパーは、音をアタック部分とディケイ部分に分けて処理します。アタック部分は、音の立ち上がり部分のことで、ディケイ部分とは、アタック部分に続く音が減衰して消えていく部分のことです。
トランジェントシェイパーは、アタック部分とディケイ部分をそれぞれ増幅するか減衰させるかします。
アタック部分を増幅すれば、パンチのある音になります。減衰させれば、アタックの弱いソフトな音になります。
ディケイ部分を増幅すれば、ファットな音になります。減衰させればディケイの短いタイトな音になります。
トランジェントシェイパーの使い方
トランジェントシェイパーの主なパラメーターはアタック、リリース、スピード、ボリュームの4つです。
- アタック : アタックの増減率
- リリース : リリースの増減率
- スピード : アタック部の時間
- ボリューム : 音量
アタックは、音のアタック部分の増減率を調整します。
リリースは、音のディケイ(リリース)部分の増減率を調整します。
スピードは、アタック部分の長さを調整します。
トランジェントシェイパーとコンプレッサーの違いと使い分け方
ドラム系の音源のダイナミクス調整には、コンプレッサーが使われることもあります。
トランジェントシェイパーとコンプレッサーは、どう違い、どう使い分ければよいのでしょうか。
トランジェントシェイパーとコンプレッサーの違い
トランジェントシェイパーとコンプレッサーの違いは、トランジェントシェイパーは音のトランジェントを検知して動作するのに対し、コンプレッサーは音量が大きい部分を検知して動作するという点です。
トランジェントシェイパーは音量の大きなものにも小さなものにも、鋭いアタックがあれば動作します。一方、コンプレッサーは音量がスレショルドを超える部分のみに動作し、音量が小さい部分では動作しません。
例えば、キック、スネア、ハイハットなどが混ざったドラム・バスに使う場合を考えてみましょう。
トランジェント・シェイパーであれば、音量の大きなキック、スネアにも効果があり、また、音量の小さなハイハットにも効果があります。一方、コンプレッサーの場合には、キック、スネアには反応するが、ハイハットには反応しないというようになります。
トランジェントシェイパーとコンプレッサーの使い分け方
ドラム音などのパンチ感、ファット感などを調整する場合には、トランジェント・シェイパーのほうがコンプレッサーより、パラメーターが少なく簡単です。
トランジェント・シェイパーで、望んだ効果が得られなかった場合に、コンプレッサーを試してみるとよいでしょう。
おすすめトランジェントシェイパーVSTプラグインソフト
Smack Attack / Waves
Smack Attack / Waves は、グラフィカルなインターフェースで使いやすいトランジェントシェイパーです。アタック、サステインのレベルだけでなくエンベロープの形や長さも調整できます。
Wavesの定番バンドルには収録されていないので、単品での購入がおすすめです。

Transient Master / Native Instruments

Transient Master / Native Instruments は、シンプルなトランジェントシェイパーです。Attack, Sustain, Gainの3パラメーターでかんたんに使うことができます。
Transient Master は、Native Instrumentsのプラグインバンドル Komplete に収録されています。


DH-TransientShaper / DTM Hacker(フリー)

DH-TransientShaper / DTM Hacker は、シンプルなトランジェントシェイパープラグインです。
アタック・リリースの音量と時間を調整できます。
Transient Lite / Audec(フリー)

Transient Lite / Audec は無料のトランジェントシェイパーです。ドラムサウンドのアタックとリリースをかんたんに調整できます。
まとめ
トランジェントシェイパーは、コンプレッサーと比べると直感的に操作できDTM初心者でも簡単に使えます。ドラムなどのパーカッシブな音源の質感の調整は、トランジェントシェイパーを使うのがおすすめです。
ミキシング・マスタリングについてさらに詳しく学びたい方にはこちらの本がおすすめです。